第1回シンポジウム
~木曽から見つめよう、木曽から発しよう!~ 現代社会において少子化・高齢化が進み、農村地域の衰退が懸念されています。 農地や森林が荒廃し、集落さえも消えようとしています。さらに地域の伝統文化、技や技術の伝承などにも暗い影を落としています。 そんな農山村に新しい未来が開けるように、将来に輝く木曽学研究所を目指したいという想いから第1回「木曽学シンポジウム」を9月19日・20日に開催しました。
記念講演 佐々木雅幸先生
『木曽学のすすめ ~イタリアに学ぶまちづくり』
シンポジウムでは、まず、佐々木雅幸先生にイタリアボローニャのまちづくりについて講演をいただきました。 ボローニャという町は、経済の主役が職人で至る所に小さな工房が点在しています。そうした職員たちがネットワークを結び、情報を共有しながら協力体制を確立しています。中世までは手作りの作品が多かったわけですが、新しいデザイン、技能等を加えて現在の経済に生かすことで世界の競争に生き残れる製品となりました。固有の文化に磨きをかけることで、質の高い本物の価値が見出され、おのずと訪れる人が増える。こうした職員の仕事の追及が地域の発展につながる要素にもなります。また、オリンピックが開かれたバルセロナでは、町の中にたくさんの広場があり、そこには芸術・文化的施設が必ずあるので、日常的に触れる機会が多いということです。いろんな人たちと対話をし、考え方は多少違っても共通点を見出す、お互いの関係を理解しようとする姿勢が重要になります。 大量に物を造り生産する工程は、中国・アジア大陸に移っています。これからは個性的、職人的なものづくりが見直される時代になると佐々木先生は推測しています。その意味から、木曽学研究所では知恵と技能を磨き人材の育成を支援するとともに、地域固有の資源の再発見、また伝統文化と先端文化の融合により可能性を追い求めて欲しいと述べられました。
佐々木 雅幸 氏 大阪市立大学大学院教授。イタリアにおける文化と創造に満ちたまちづくりに造詣が深い。代表著書「創造都市への挑戦」
パネルディスカッション
テーマ「新たなまちづくりに向けて、今、木曽が残すべき、匠の技、伝統の糧、文化の輝き」
○コーディネーター 佐々木雅幸先生
○パネラー 陳昌鉉先生、田中夏子先生、 井口利夫先生(町公民館長)、木曽福島町長
続いて開かれたパネルディスカッションではいろんな角度から見た木曽の資源等について意見交換を行いました。 当町の食文化や景観保存、住民協定等について町長が口火を切った後、トークが繰り広げられました。 木曽のすばらしい自然との出会いからバイオリン製作に人生のすべてを賭けてきた陳さんは、苦しい生活の中にも、何にも代えがたい自然の恵みが心の糧となり、自らの創造、挑戦につながってと語りました。陳さんは自然は宝庫でありすべてが宿っている。人間の方から自然に潜り込んでいく必要があるとも。自然界には人間の耳には聞こえない幻の音(倍音)があり、バイオリンはひずみのない自然な音によって奥深いハーモニーが奏でられています。川のせせらぎ、木々がふれあう自然な音はどこで聞いても癒されるといいます。刺激を求めて都会に出ても、心が病んでいる若者が多い。いずれ自然の魅力に引かれて戻ってくるのではないかと感じておられるようです。 井口公民館長からは、まずいろんな面からふるさとを知ろうと開催した「ふるさと講座」についてお話がありました。毎回身近なテーマを設け、地元の皆さんが講師に当たられて自分たちの公民館活動としてふるさとを見つめ直した点がすばらしかったとのことでした。 田中教授は「スローフード」という観点から、地元の農産物、食材をいかに"調理して″"外部へ発信″するかで、木曽の資源と職人の技が融合した新しい関係が生まれるのではと意見を述べられました。 佐々木教授は、木曽の自然こそが地域固有の資源であり創造性を養うものがあると語り、「美しい」「おいしい」という決まり文句ではなく、その良さ、課程についてさらに深く突き止めることが、本物の資源につながると述べられました。 この第1回のシンポジウムには県外から見えた方も多く、夕方から開かれた交流会では、参加者全員で正調木曽節に合わせて木曽踊りを踊り、木曽の伝統文化を楽しみました。
また、2日目に開催した工房見学では、木曽の木材が素朴な作品に仕上がるまでの工程を見学したり、歴史町内散策をはじめ、若者たちが木曽川でのラフティングを体験しました。 この木曽学シンポジウムは、これから研究所を立ち上げ定期的に開催していく予定です。 第2回目は12月4日(土)・5日(日)に「聞いてみよう森の声を!」をテーマに開催します。多くの皆さんなの参加をお待ちしております。
陳 昌鉉 氏 1929年韓国慶尚北道金泉市梨川村生まれ。 1956年明治大学英文科卒業、28歳から4年半木曽福島町に在籍、バイオリン作りの基礎を独学で培う。 1976年フィラデルフィアのアメリカ国際バイオリン・ビオラ・チェロ製作者コンクールにおいてバイオリン・ビオラ・チェロの音響と細工の全6種目中5種目でゴールドメダル受賞。1984年アメリカバイオリン製作者協会より無鑑査製作家の特別認定とマスターメーカーの称号を授与される。1998年日本文化振興会より国際芸術文化賞受賞、東洋のストラディバリウスと呼ばれる。 夫人は木曽郡上松町出身。 今月11月27日にフジテレビ系列で自叙伝「海峡を渡るバイオリン」がドラマ化、放送予定。 東京都調布市在住。
田中 夏子 氏 都留文科大学教授。日本の農村社会、地域社会の労働条件に精通している。 代表著書「スローな働き方に出会う」
井口利夫 公民館長 当町民代表としてパネルディスカッションに参加。
木曽福島町長 田中 勝已 (現木曽町長)
シンポジウム講演録
第1回記念講演 第1回パネルディスカッション
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