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第2回シンポジウム

地域は今 何を残すべきか?~木曽にみる山の在処~

平成16年12月4日(土)・5日(日)、第2回目の木曽学シンポジウムを開催しました。
今回は、「森林」をテーマに「枝打ち体験」、「城山国有林散策」等の体験をはじめ、哲学者で立教大学大学院教授である内山節先生の記念講演、「地域は今、何を残すべきか?木曽にみる山の在処(ありか)」をテーマにパネルディスカッションを開催しました。
 豊な自然に恵まれている木曽谷ですが、産業の低迷、後継者不足などにより、森林の手入れは行き届かずに放置されたままになっているのが現状です。古くから人々の往来があったこの街道筋では、山の暮らしで生活を支えていました。時代とともに生活様式が変化する中で、失われたものを認識し、木曽の山で資源として活かすものはないだろうか、パネラーのみなさんと考えました。

☆記念講演 内山 節 先生

『森を語る』

『森を語る』と題して記念講演を行った内山節先生は東京の生まれですが、群馬県上野村で農家を借り受けて暮らしています。(以下講演内容抜粋)
 
上野村は、人口が1,600人足らずの小さな村です。木曽谷よりも「田舎」といわれるこの村ですが、人口の約2割弱のみなさんは都会からの移住者です。昔からこれといって伝統産業がなかった村では、新しい手法や技術によって原料・材料にこだわった加工品などを創り出しています。また村独自のI(アイ)・ターン補助制度、山村留学、村営住宅や情報通信網の整備といった行政の取組みがうまくかみ合って、新しい人にも受け入れやすく、また自然と人間の営みが共存できる環境にあります。
 地域の伝統や文化を守ろうということで、最近はどこでも「保存」に力を入れています。地域を知る、伝承することの中で大切な要素が「非文字の学問」です。これは地域で暮らしていくための知恵、技術などを文字として残すというよりも、先輩から後輩へ「受け継ぐ」というものです。結果論だけでなく、受け継がれてきた過程が大切であり、そうしたコミュニケーションが地域の活性化にもつながります。近年の生活様式の変化に伴い、「非文字の学問」を失ってしまうことで地域の学問や生活が崩れてしまうという危機感があります。
 「森」は長い歴史とともに生きてきました。一言で「森づくり」といっても長い年月を見つめ直すことが必要です。


内山 節 先生

内山 節 先生
哲学者 立教大学大学院教授。
自然と労働、時間を軸に哲学を研究されるほか森林問題にも造詣が深い。群馬県上野村には20数年訪れ続け、農家を譲り受けて暮らしている。
主な著書に「自然と人間の哲学」「山里の釣りから」「里の在処」「森の列島に暮らす」ほか。

☆パネルディスカッション

テーマ「地域は今、何を残すべきか?木曽にみる山の在処(ありか)」

◎コーディネーター 菅原 聡 先生
 ◎パネラー  内山 節 先生、巾崎 理一 さん(町代表)

記念講演に続いて行われたパネルディスカッションでは、参加者も加わり活発な意見交換が行われました。

菅原先生… シンポジウムのテーマは「地域は今、何を残すべきか?」ですが、残すべきというよりも、生活の変化等により失ってきたものが大きいのではないでしょうか。経済産業のみならず、人間の生活そのものについても近年は「個人」という位置づけです。昔は何でも「共同」で行ってきました。地域そのものに連帯感がなくなってバラバラな感じがします。

巾崎さん…昔は、何をするにも村中で力を合わせて行いました。炭焼き、蚕や馬の世話、米の収穫など家族で協力し合い、隣近所で助け合いました。

菅原先生…自然と共に人間が幸せに暮らせる。自然に囲まれている「木曽」だからこそできそうな気がしますが・・・。生活様式は変わってしまっても、人間の心は昔から共通であると感じますが、だんだんと人間の基本的な部分が徐々に失われてしまっているようです。

内山先生… 上野村では木曽以上に自給自足はできず、食べるものより売れるものを作れという感じでした。昔からそうですが、多様の商売人がいてお互いの生活が成り立っています。いろんなことのできるエネルギーが地域を豊にしていく。最近、上野村では変わったツアーを考案してみました。「ヤマメとイワナの産卵を見よう」、「動物の足跡を見つけてみよう」、「干し柿作りをしてみよう」軽い気持ちでしたが都会からの参加者が多く、また好評でした。自然が相手なので苦労もありましたが、やってみた価値はありました。大きなことでなくても地域で取り組めることから始めてみたらどうでしょうか。

参加者… 「枝打ち体験」はとてもおもしろかった。山村では山林荒廃、後継者不足に悩んでいるが、都会では自然保護のために何か役に立ちたいと考えている人も多い。都会の人間と手を携えてみては。年寄りは都会で働く場所がないが田舎では働けます。枝打ち体験ツアーをやってみたら案外ブームになるかもしれないと思います。

菅原先生…林業は計画があって生産が可能になります。加工、商品に至るまでの流れを全体像で見るシステム作りが必要であると考えます。

参加者…最近は「さる」「いのしし」などによる農作物の被害が深刻化しています。罠を仕掛けてもかからないし、人間との知恵くらべです。気が付けば、人間が網の中で農作業をしている状況ですね。

菅原先生… 山の崩壊、天候不順によるエサの不足も原因として考えられるが、動物界の生態系の変化が過渡期にきている。有効な対策はこれといってありませんが、動物と人間とのすみわけが必要です。昔、農家では犬を飼っていたので犬が獣を追っていました。野生動物は縄張りがあるので、すみわけさえわかれば里には近づかないのでは。

参加者…私も山登りが好きで都会から移り住んできました。都会人でも自然が大好きな人はたくさんいるし、田舎で生活したいと思っている人も多いと思います。ぜひそういう人たちに対して、懐を広げた受入れをしてもらいたいと思います。

菅原先生… 田舎は「のんびりした生活」というイメージがあります。田舎は技術が高く腕が良い。労働はきついが、心が安らぎます。ぜひ職人の養成システムを作り上げて地域の活性化につなげてもらいたいと思います。山村は冬の時代であると言われますが、どんな産業でも浮き沈みはあります。伝統を重んじ、新しきを加えることで自然の中で生活できる幸せを感じ取ってほしいと思います。

2日目に行われた「城山国有林散策」

戦国武将木曽義康が山城を築いた城山国有林は、476種類の植物が自生する自然の宝庫です。

内山 節 先生
哲学者 立教大学大学院教授。
自然と労働、時間を軸に哲学を研究されるほか森林問題にも造詣が深い。群馬県上野村には20数年訪れ続け、農家を譲り受けて暮らしている。
主な著書に「自然と人間の哲学」「山里の釣りから」「里の在処」「森の列島に暮らす」ほか。


町代表 巾崎 理一 さん
長野県指導林家。木曽福島町黒川在住。木曽森の会会長、木曽谷流域林業活性化センター理事を務める一方で、ふるさと体験館を運営するNPOふるさと交流木曽理事長としても活躍。平成 14年に(社)国土緑化推進機構から育林名人として「森の名手・名人100人」に認定される。そのほか林業経営で林野庁長官賞、しいたけ栽培で農林水産大臣賞を受賞、森づくりの達人。

シンポジウム講演録

第2回記念講演
第2回パネルディスカッション