シューベルト ピアノ五重奏曲イ長調 作品114 D.667 「ます」解説:寺西基之 シューベルト(1797-1828)は1819年夏、上部オーストリアの町シュタイアを訪れ、ここの鉱山長官パウムガルトナーと知り合った。パウムガルトナーは自宅のサロンで演奏会をよく開き、自らもチェロを巧みに弾いて演奏に加わったほどの、熱烈な音楽愛好家であった。彼が、ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロにコントラバスを加えたやや異例の編成(フンメルによる前例はある)の五重奏曲の作曲をシューベルトに依頼したのも、おそらくこうした自宅でのコンサートで演奏するためであったことは、想像に難くない。こうして「ます」五重奏曲は生れることとなった。作曲年については1819年説のほかに、シュタイアを再訪した1823年もしくは25年とする説もあるが、いずれにせよ風光明媚な町シュタイアの美しい自然を彷彿とさせるような、明るくすがすがしい気分に満ちた作品となっている。なお「ます」という題は、変奏形式をとる第4楽章の主題として、1817年にシューベルト自身が作曲した歌曲「ます」の旋律を用いていることによっている。 無断転載厳禁 |
