コルンゴルト ピアノ五重奏曲ホ長調 作品15
解説:寺西基之
エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト(1897-1957)はブルノ生れ、早くからマーラーに評価され、11歳の時にバレエ「雪だるま」がウィーン宮廷劇場で絶賛を浴びるなど神童として知られた。その後の活動も順調で、1920年のオペラ「死の都」の成功で名声は頂点に達し、ウィーンの代表的作曲家としての地位を確立する。しかし1934年ハリウッドに招かれ映画音楽で評価されたことが人生の転機となった。ナチ下に置かれたオーストリアに戻れなくなったユダヤ系の彼はそのままハリウッドの映画音楽作曲家としてアメリカに留まり、オスカー賞も2度受賞するなど華やかな活動を行なった。戦後は古典ジャンルの音楽の作曲を再開するが、伝統的語法によった作風が時代遅れとみなされたこともあり、かつての人気をヨーロッパで回復することができなかった。コルンゴルトの音楽が再評価されてきたのはごく最近のことである。 彼の音楽は、R・シュトラウス、マーラー、ツェムリンスキーといったウィーンの後期ロマン主義の系譜に本質的に連なるものである。そのことは、オペラ「死の都」の成功間もない1920-21年に書かれたこのピアノ五重奏曲にも示されており、甘美な旋律、機能和声の枠内における錯綜とした和声、速度や発想の細かい指示による表情の多様な変化によって、濃密な響きの世界が作り上げられている。 第1楽章(中庸の速度で、激しく華麗な表情をもって)は雄渾な第1主題とロマン的な甘美さを持った第2主題を持ち、表情の大きな揺れ動きと劇的な起伏のうちに展開する。第2楽章(アダージョ)は自作の歌曲集『4つの別れの歌』作品14に基づく変奏形式の緩徐楽章。歌曲集の第3曲「月よ、君はこうしてまた昇る」から取られた甘美極まりない主題(“きわめて静かに、常にレガートで表情豊かに”と記されている)をもとに、表現の激しい振幅のうちに9つの変奏が繰り広げられていく。第3楽章(フィナーレ、重々しく、ほとんど荘重な感じで~アレグロ・ジョコーソ)は悲劇的な序奏(その主題は前楽章の主題と関連する)の後、ヴァイオリンのカデンツを経て、一転して明るい主部に入る。快活さの中にも様々な表情を見せて発展する技巧的なフィナーレである。
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