ブラームス セレナーデ第1番ニ長調 作品11(九重奏版)
解説:寺西基之
ブラームス(1833-97)は青年時代の1857年から59年にかけて、デトモルトの宮廷に務めた。各年とも9月から年末までだけの勤務で、室内楽演奏、合唱団の指揮、婦人たちへのピアノ指導が主な仕事だった。時間的にゆとりのある務めだったので、ブラームスは空き時間を作曲や勉強に当てることができ、また宮廷には45人程の楽員を有する楽団があったので、楽器や管弦楽法についての知識を得ることができた。こうした恵まれた環境の中でセレナーデ第1番が書かれることとなる。 彼がセレナーデを書こうと思い立ったのは、デトモルトの楽団でモーツァルトのセレナーデを演奏した機会に霊感を得たからともいわれる。こうしてデトモルトでの最初の年(1857)にセレナーデは書き始められ、これは翌年までに、九重奏の室内楽編成(フルート、クラリネット2、ホルン、ファゴット、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)の作品として書き上げられた。この時は4楽章構成だったと推定されているが、その後ブラームスはこれを管弦楽用に改作、2つのスケルツォも追加し、こうして作品は1859年秋に6楽章構成の管弦楽版に生れ変わった。今日伝えられているのはこの管弦楽版で、当初の九重奏版はブラームスの手で破棄された。 本日演奏されるのは、近年J・ロッターがオリジナルの九重奏編成を再構成した版。あくまで管弦楽版をもとに推測により復元したものなので(管弦楽版で追加されたスケルツォも含む)、必ずしもブラームスのオリジナルがこの通りだったというわけではないが、作曲者の当初の意図を探ろうという態度を基本としており、作品の元々の響きを考えるにあたって大きな意義を持つものといえよう。いずれにせよ、親密で明るい伸びやかな曲想など、古典的なセレナーデの様式と精神を受け継いだ作品となっている。 第1楽章(アレグロ・モルト)はソナタ形式をとり、田園的な雰囲気を持っている。第2楽章(スケルツォ、アレグロ・ノン・トロッポ)はやや暗い趣を持ったスケルツォ。第3楽章(アダージョ・ノン・トロッポ)は内面的な叙情を湛えた長大な緩徐楽章で、その奥深い情調は明らかにロマン派のものである。一転して第4楽章(メヌエット)は古典的な明快な2つのメヌエットからなる。第5楽章(スケルツォ、アレグロ)は伸びやかなスケルツォ。第6楽章(ロンド、アレグロ)は快活なロンドのフィナーレで、この大作を明るく締め括っている。
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