ベートーヴェン 七重奏曲 変ホ長調 op.20解説:寺西基之 ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)は、いわゆる古典派様式から出発しながらも、次第にそれを拡大変容していくことで、新しい時代に相応しい独自の様式を求めていった作曲家だった。そうした萌芽は、外見的には従来の様式に従っている初期の作品においてもすでに見受けられ、例えば1799年から1800年にかけて作曲された第1交響曲では古典的外観の中に多くの新機軸が見られる。その第1交響曲に比べると、同時期に書かれたこの七重奏曲は、当時のウィーンの貴族の趣味に合わせて18世紀的なディヴェルティメントの様式に沿って書かれた作品のため、あまり革新性は前面に出ていない。しかしそうした制約の中で、例えば主題の扱いや拡大的な形式の扱いなどに、ベートーヴェンらしい独自な個性を打ち出している。そうした創意工夫のうちに展開される生気に満ちた音楽に若きベートーヴェンの意欲が感じられ、その点でこの七重奏曲は初期のベートーヴェンの一面を代表する作品に数えられるだろう。編成はクラリネット、ホルン、ファゴット、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスとなっている。公式の初演は1800年4月にウィーンで第1交響曲とともに行われた。
曲は全6楽章という、ディヴェルティメント風の多楽章構成をとる。第1楽章(アダージョ~アレグロ・コン・ブリオの)は堂々とした序奏に、快活なソナタ形式の主部が続く。第2楽章(アダージョ・カンタービレ)は歌謡的な主題を中心としたソナタ形式の緩徐楽章で、その美しい情緒は時にロマンティックともいえる表情を生み出している。第3楽章(テンポ・ディ・メヌエット)はメヌエット楽章で、主部の主題はベートーヴェン自身が1796年に作曲したピアノ・ソナタ作品49-2の第2楽章のおなじみの主題を転用したもの。第4楽章(主題と変奏、アンダンテ)は民謡風の主題に5つの変奏が続く。第5楽章(アレグロ・モルト・エ・ヴィヴァーチェ)はスケルツォ楽章で、若々しい曲想のうちに諧謔的な性格を打ち出している。第6楽章(アンダンテ・コン・モルト・アッラ・マルチャ~プレスト)は荘重な気分を持った短調の短い序奏の後、ソナタ形式による明朗な主部が溌剌と展開する。 無断転載厳禁 |
